側弯症の表記について

最近の新聞の記事において「側彎症」の「わん」に「湾」が用いられ、「側湾症」と記載されていることがあります。
しかし、以下の点で「湾曲」と記載することは間違いです。
  1. 脊柱側彎症とは一つの身体異常状態に与えられた医学名であり、固有名詞と考えるべきものです。従って「側彎」を「側湾」と表記することは、「田中さん」を「田仲さん」と書くことと何ら変わらないと思います。もっとも望ましい記載は「彎」を使用しふりがなを付けることでしょう。わかりやすくするには、「側わん」と記載するべきでしょう。
    「側湾症」は、整形外科学用語集(日本整形外科学会編)にはなく、存在しない病名であり異なる名称と考えねばなりません。
  2. 「湾」には曲がったという意味は全く持たず、海面が陸地に入り込み、外海にむかって開いている所を意味します。「彎」は弓なりに曲がったという意味であり、側彎は、脊柱が横方向への彎曲を持つ、側方に曲がったという意味で、新たに命名されたものです。これを機械的に「側湾」と置き換えるのは不適当であり、不正確な表記です。これは、自国語である漢字文化を守る意味からもきわめて重要と考えます。
  3. 基本的なことは、共通の言語を用いることです。わかりやすい言葉を用いることです。かといって、全く異なる意味の字を、固有名詞に機械的に当てはめて良いとは思えません。
現在、この病気に対しては、正しい情報よりも、何の根拠もない情報の方があふれかえっており、将来、国民には多大の健康被害がでるであろうと予測されます。
インターネットの発達により、簡単にキーワード検索から側彎症情報に到達します。その際、医学的知識のある人が作ったホームページは「側彎症」、「側弯症」、「側わん症」としています。
もし、キーワードに「側彎症」、「側弯症」、「側わん症」、を入れず、「側湾症」と入力した場合には、正しい知識を記載したサイトには到達せず、荒唐無稽な話や、誤った内容、ひいては重大な健康被害を受ける可能性のあるサイトばかりに到達します。
新聞記事に「側湾症」を用いることは、国民を望ましくないサイトに誘導することになります。
この事実からも、たかが「わん」の一字に重大な意味があることをご理解ください。
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