以前は一本の金属の棒で矯正・固定していましたが、手術のあと10か月の間ギプスをする必要があったため、患者さんには大きな負担でした。現在は手術方法が進歩し、手術後にギプスやコルセットをしなくてもすむようになりましたが、この新しい方法は私が約20年前(1985年)に日本に初めて取り入れた方法です。
前方法は、大きくわけて2つの方法があります。
一つは、背骨のクッションの役割をしている椎間板を切除して、一つ一つの背骨の連結を切り離す前方解離術で、矯正をしやすくするために、後方法と組み合わせて行ないます。私は、この前方解離術をするのに胸腔鏡を使用する新しい方法も行なっています。
もう一つは、椎間板を切除したのち、数本の特殊なねじを脊椎の横からねじ入れ、金属の棒で連結し矯正・固定します。この場合も肋骨などを採取して骨移植します。
重度な側弯に対しては、矯正が困難で危険性も増すため、手術に際しては他にもさまざまな手段が用いられます。
手術での矯正される程度は、個人差が大きく、年齢が高くなるほど背骨も硬くなり矯正率も悪くなります。側弯のおおよその矯正率は、後方法で約60%、前方法で約70%です。
手術の危険性については、「側弯症の手術前の説明(一例)」を参考にしてください。
神経の麻痺(足が動かなくなったり排泄感がなくなるなど)、手術後の感染(化膿)、肺などの呼吸器の障害などいろいろな合併症が数%前後生じる可能性があります。神経の麻痺に対しては手術中に電気で神経を刺激したり、特殊な麻酔方法で手術中に足を動かして麻痺がないことを確かめる方法がありますが、絶対大丈夫という方法はありません。危険性の程度は、それぞれの側弯の状態によって異なりますので、手術に際しては詳しく説明を受けてください。 |